塾に通って頭が悪くなるという現象①

 

塾に行く目的といえば、成績を伸ばすため、志望校に合格するため、あるいは学校でついていけないからついていくために通うなど、生徒の状況によって様々な目的があると思います。

いずれにしてもお金を払って塾通いをする以上、何らかの成果を期待するのが普通です。しかし、『塾通いをしても何の成果も得られなかった』ということが往々にしてあります。

それどころか『塾通いしたら逆に頭が悪くなった』という衝撃的な話は聞いたことがあるでしょうか。

今回はそれについて述べます。

 

 

1.教え方の問題
テキストに書いてあることをそのまま読み上げて板書し、問題を解かせるだけで生徒ができるようになると思っている講師が大勢います。

普通の授業風景と思うかもしれませんが、これは典型的な、一部の生徒しか上がらない下手な指導です。
プロによる『理解型への思考の誘導』が入っていません。

これをしないと、数学が得意でない生徒の多くは『暗記当て嵌め型』という全く応用力のない状態になってしまいます。

例えば、ある教材に確率の求め方として以下のように書いてあるものがあります。

「起こる場合が全部でN通りあり、そのどれが起こることも同様に確からしい(起こることが同じ程度に期待できる)とする。そのうち、ことがらAが起こる場合がa通りであるとき、ことがらAの起こる確率Pは次のようになる。

 

P=a/N

 

いかにも数学っぽい書き方で、数学が得意じゃない人にとってはわかりにくい表現です。数学のテキストには大体こう書かれています。

端的ではあるものの、初学者に向けてどういうことかをわかりやすく説明しようとする姿勢は私には見えない。

イメージが湧かないのでこんな風に教えてはいけません。

そもそも私はこんな公式を教えません。

いらないことまで覚えさせると中・下位層の多くは考えずに答えが出てしまうやり方に頼ってしまう、すなわち暗記当て嵌め型になってしまうからです。

定期テストは良いのに中3の実テ・模試・入試になると点数がガタ落ちする生徒は毎年多くいますが、大体はこのパターンです。

 

これは教え方の問題です。

教える人間がその単元の導入部分で「状況を把握して、条件を満たすにはどうすればいいか考えて解く」ではなく、「こうすれば答えが出る」と教えてしまうとそうなります。

上の公式を最初に提示するのがまさにそういうこと。

いりません。

確率を履修済みの人が式の説明を読めば「まぁ、わかる。端的にまとめればそうなるな」ぐらいに感じますが、まだ習っていない生徒、つまり確率の概要も全体像も見えていない人からするとあの説明では一体何のことやら全くイメージがつきません。

「これ以上わかりやすい表現なんてない。これでわからない人いるの?」と思う人もいると思いますが、学習指導の経験が無ければそう思うかもしれません。
しかしやってみればわかります。
中学生の大半はこの表現ではイメージがつかないんです。ビックリするほど伝わらない。

 

イメージがつかないことを文字面だけ暗記しても、結局何のことかわかっていないので必ず忘れます。

すると後日、「やり方忘れた、どうやるんだっけ」と言ってこのページを再度開く。開いた後は、「そうだった、P=a/Nだった。この公式をまず暗記しよう。Pは確率で、Nは起こる場合全体の数で、aはことがらAが起こる数で、えっとAってなんだ? ことがら? どの数字のこと? まぁいいや公式にAは入ってないし。あとは問題文に出てくるNを見つけて、aを見つけて、それぞれ見つかったら公式に当て嵌める。すると答えが出るんだったな。OK。・・・えーと、なんだっけ、もう一回。まず公式暗記して、Pが確率で、Nが・・・」

といったアプローチになる。

最悪です。もはや数学ではない。

本来、数学の問題文の読み方は「どういうことを問われているのか。条件を満たすにはどう考えればよいか」という目線で読み解くものなのに、これは「公式を覚えて当て嵌まる数字はどれか」という目線になっている。

やっていることは状況判断ではなく当て嵌まる数字探しです。

数学が苦手な生徒は 数学をこのように捉えていることが多く、「これが何の役に立つの?」という疑問にもつながりやすい。

はっきり言います。そういう捉え方で数学を学んだところで何の役にも立ちませんし、数学はそういう学問ではありません。

 


もちろんこれは、生徒が悪いのではありません。そういう思考回路になるように、最初の導入部分で「こうやりなさい」と誘導した講師の教え方に問題があるのです。

勘のいい生徒ならともかく、普通は初めて習うことに対して「こうするんだよ」と先生に言われたら、ああ、こうするのか、と思うのは当たり前。

生徒側はそれが正しいアプローチかどうかの裏が取れませんから、言われた通りにやるだけです。

というより、先生が変な教え方をしているとは普通思いません。

すると、理解とは程遠いアプローチなので浅い問題しか解けず、応用が入ってくるとどんどん分からなくなっていきます。

応用には思考が必要なのに、今まで思考をショートカットして答えだけダイレクトに求めてきたから応用ができない。

 

『解く』のと『なぜかわからないけどこうすれば答えが出てしまう』のは全然違います。

 

そんな方法を先生が積極的に教えたらどうなるでしょう。

忠実に実行するほど頭は悪くなります。

しかしその場限りにおいてはそのアプローチでも答えが合っているために正解と判断され、パッと見は大問題であることに気付きにくい。

しかしこれは今後の数学を理解するにあたって大問題なのです。

 


小学生でもよくあります。

速さの単元において、導入の1回目の授業から「み・は・じ(あるいはき・は・じ)」の図を書いて、当て嵌めたら答えが出ると教える講師。

また、百分率でも「く・も・わ」などといった同様のものを用いて当て嵌めさせようとする講師。

私から見ると、わざと生徒の頭が悪くなるように誘導してるのかな、とさえ思ってしまいます。

お金を払って頭を悪くされたらたまりません。

 


こういった求め方はそれを使わずに応用まですべて解けるようになったのを確認してから、最後の最後に 裏技として教えるのならアリです。

しかし、原理原則の理解や工夫して解くことができるようになっていないうちにこれを教えると、楽に答えが出てしまうのでこれを好んで使うようになります。

すると理屈はわからなくても答えだけはしっかり合っているので、わかっていないことにさえ本人は気付かない。

躓きの原因となるわけです。

この場合、躓いた大元は一番最初のとっかかりにあるので、本当に生徒のことを想って解決しようとするなら最初のアプローチの段階から全部やり直しになるわけですが、もしその生徒に対して最初に戻って説明すると「いやその問題のやり方は知ってます。そうじゃなくて、もっと難しい応用のところが分かんないんですけど」と言い始める。

つまり躓いている箇所がどこなのかという判断も自分でできないほどにマズい状況なわけです。

「君は最初から分かってないよ」と言っても納得しません。

「答えが出せる」のと「理解している」の区別がついていないのです。

こういった場合私はその問題を教えず、問答無用でその単元の一番最初に戻って全部やり直すためにカリキュラムの組み直しを図るわけですが、他塾では大抵生徒の言うがままに『聞かれた問題の解説』をし始める。

もっと前から躓いているのにピンポイントで応用問題だけ説明しても、その生徒はその問題の解法手順を暗記するだけで根本的な理解には至りません。

そのことが講師・生徒の両方ともわかっておらず、互いがその場だけわかったつもりになって、実際にはわかっていないために点数につながらない。

そして「なんでだろう。あんなにやったのに。あのときは分かっていたのに」と、講師・生徒の両方が頭をひねるという悲劇があちこちの塾で繰り広げられています。

 

このケースでは一連の流れの中に生徒の落ち度は一つもなく、生徒は指示を守っただけ。なんでだろうも何も、講師の腕が悪いからです。

こんなことをプロみたいな顔してお金を取って提供している始末。


悲惨です。下手な塾に行くとこうなります。

 

数学嫌いが量産される理由はいくつかありますが、そのうちの一つがこれです。

つまり、教える側の人間が下手なために、忠実にその通り実行した生徒が次々と数学に対して理解不能になっていくわけです。

その生徒が大学生や大人になって学習指導の仕事に就くと、思考力ではなく暗記当て嵌め型でしか数学を捉えたことがないもんですから、やはりそういう風にしか指導ができません。

負の連鎖です。

思考力の高い生徒を除き、多くの教え子はまた暗記当て嵌め型になっていきます。

その型は応用が利かないので、高校数学ではボロボロになります。

何をやっているのかわからないままただただ公式とやり方を暗記して当て嵌める作業を繰り返し、忘れ、また覚え直し、とやっていきます。

応用などできようはずもない。

そしてそうなる理由の大部分は生まれつきやIQによるものではなく、教え方によって左右されるわけです。

現に当塾に3年通った生徒はどんなに算数ができない状態で入塾したとしても、卒塾時には必ず秋田高校合格者レベルの数学力が身についています。

定期テストだけでなく中3の実テ・模試・入試で高得点が取れるわけです。

もし生まれつきやIQによって数学の出来が決まるのなら、この実績に説明がつきません。

ゆえに義務教育の範囲においては生まれつきの能力や文系理系など関係なく、教え方ひとつでいかようにも変えることができるわけです。

教える側の腕次第で誰でも逆転ができます。


以上のことから「塾に通って頭が良くなる」ということは当然ありますし、逆に「頭が悪くなる」ということもあり得ます。

今日もそこら中で起こっています。頭が悪くなる原因は『講師の腕が悪い』、これに尽きます。

なお腕の良し悪しを測るバロメーター、つまり簡単に見極める方法もあるので、後ほど解説します。

 

 

>>②に続く

 

 

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